長距離無線LAN

長距離無線LANの記事
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長距離無線LANの用途と事例
長距離無線LANは、屋外や敷地が広い場所、公道をまたぐ拠点間など、数百メートルから数キロメートルの距離を無線で接続したいケースで利用されています。

例えば北海道の牧場では、搾乳ロボットや発電所の管理のために約1km先まで無指向性アンテナを設置し、広大な敷地全体でネットワークをカバーしています。

黒部ダムなど有線敷設が困難な山岳地でも、無線LANで観光客向けのWi-Fiや展望台までのネットワークを構築しています。

キャンプ場や港湾、競輪場など公共エリアでも、耐候性や設置の柔軟性を活かして長距離無線LANが活用されています。

利用機器と特徴
バッファローの屋外対応アクセスポイントや無指向性・指向性アンテナ(WLE-HG-NDC、WLE-HG-DA/AGなど)を組み合わせて環境や距離に応じて設置。

多台数接続対応や耐環境性能(温度-25~55℃、湿度10-90%、防水防塵IP55)を備え、PoE対応モデルも多い。

指向性アンテナは見通し距離が長い拠点間接続、無指向性アンテナは広域カバーに利用され、現場の状況に合わせて使い分けられている。

導入のメリットとポイント
有線LAN敷設が難しい場所(公道など)のネットワーク構築が簡単になるほか、許認可や工期、コスト面でも有利。

アンテナの選定(指向性/無指向性)や設置場所、PoE対応による設置性向上が重要であり、モデルの互換性確認も必要。

この記事は、長距離無線LANが屋外・大規模施設・遠隔地間接続など幅広い用途で導入されている事例と、設計時の着眼点を具体例とともに紹介しています。

1. 製品アーキテクチャとアンテナ構成
バッファローの長距離対応は専用機ではなく、屋外対応アクセスポイントとオプションアンテナの組み合わせで実現。

アクセスポイント例: WAPS-AG300H, WAPS-300WDP, WAPM-APG300N, WAPM-1266WDPR など

アンテナ種別:

無指向性(例: WLE-HG-NDC、360°カバー、到達距離1km以上)

指向性(例: WLE-HG-DA/AG:開角55~65°、最長2km)

調整式指向性(例: WLE-HG-SEC:左右60/90/120°に可変)

2. 周波数帯と通信性能
5.470–5.725 GHz帯(W56帯)を拠点間バックホールに使用

2.4 GHz帯を公衆アクセスポイント用に併用

同時接続数: 屋内512台(WAPM-AX8R)、屋外256台(WAPM-1266WDPR)

スループット: 最大10 Gbps回線を活かすため、10 Gbps対応スイッチ(VR-U500X, BS-MS2008P)を構成

3. PoEと配線設計
PoE給電対応により、屋外機器への電源・通信ケーブルを一本化

電柱や屋根上、高さ3–5 mの設置を想定

発電機+トラック輸送で一時設置可能(酒田港事例)

動作温度: −25〜+55 °C、湿度10〜90%

防塵防水: IP55(結露しないこと)

基板フッ素コーティングで塩害・腐食対応

5. 導入事例
佐々木牧場(北海道士幌町
センタ拠点→分娩舎/牛舎/バイオガス発電所を公道越え含め無指向性アンテナで一括カバー。

黒部ダム(富山・長野県境)
レストハウス⇔展望台⇔新展望台をWAPM-APG300NでW56帯バックホール+2.4 GHz公衆Wi-Fi同時提供。

羽根谷だんだん公園キャンプ場(岐阜県
FS-M1266+WAPM-1266WDPRAを電柱設置、光回線3グループ構成+防犯カメラ併設。

酒田港クルーズ受入エリア(山形県
倉庫⇔岸壁間をWAPM-1266WDPRで接続、スイッチBS-GS2008PとPoE給電、移動設置対応。

静岡競輪場静岡県
5エリア×9回線10 Gbps、屋内WAPM-AX8R(512接続)、屋外WAPM-1266WDPR(256接続)、ローミング設定。

コクヨ工業滋賀(滋賀県
指向性アンテナWLE-HG-DA/AGで公道越え、WAPM-1266Rで事務所/工場内を無線刷新。


6. 設計上のポイント
アンテナ選定: カバー範囲・干渉・距離・指向性角度から最適化

リピーター(WDS)注意: 同一メーカー・同モデル推奨

法律・許認可回避: 公道占用許可不要で迅速・低コスト設置

信号干渉対策: 周波数切り替え機能によるチャネル自動最適化

以上の要素を組み合わせることで、広大サイト、公道越え、短期移設など多様な長距離無線LANニーズに対応している.